原則

【目的/目標】(Segsyoxafuの原則を他言語に適用する場合を除く)
・これは漢字を排除しようとするものではなく、漢字の使用が困難な状況にあっても日本語の伝達効率を下げない為、あるいはさらに上げる為のものである。

・出来るだけ入出力の際に掛かる負担を少なくし、出来るだけ同綴異義語を減らすように努める。
ただし、同綴異義語を完全に無くすことを目的としているのではない。


【使用される要素】
・使用される文字や記号の種類が最小限になる様にする。

・出来るだけ自然言語らしく書くために、ラテン文字の各文字や役物の歴史(Segsyoxafu適用以前のもの)から逸脱しない文字用法を目指す。
候補となる表記が複数ある場合、その内最も誤解を招き難いと思われるものを採用する。
ただし、将来Segsyoxafuでの綴り(表記上の語形)と読み(音韻上の語形)との関係が他の既存正書法でのラテン文字の用法からどんなに逸脱したとしても、それを理由に綴りを変えることは無い。
ちなみに、chiはイタリア語でキ、フランス語でシ、ドイツ語でヒに近く発音され、tiはフランス語やポルトガル語でチに近く発音される(ロシア語でtiにほぼ相当するтиも同様)。

・基本的に分節音素(子音/母音)は文字で、超分節音素(アクセント/声調/長短など)は記号(ダイアクリティカルマーク)で綴る。ただし、後述の「綴りの維持」に従うので、この対応がずれることもある。
※長い子音について、一つの音節内に存在するものを長子音、二つの音節に跨るものを重子音として区別し、後者を分節音素の連続と見なす。
※超分節音素による長さと見なすか、分節音素の連続による長さと見なすかは、それぞれの言語の特徴から対称性や配列制限などを基に判断する。(日本語: aa, 英語: ā)

・音節や拍の構造が綴りからわかる様に、子音字と母音字を区別する。
あくまで音節/拍の構造がわかる様にする為の分類であり、実際の音価が子音であるか母音であるかということではない。また、ここでの音節とは聞こえ度などの音声学的な概念を基にしたものではなく、正書法として都合の良い塊になる様に音韻史を基に設定された約束事としての音節である。(音韻論的な音節がわかる様にするので、結果的に音声学的な音節も十分にわかる)

・一つの文字が複数個の音素から成る音素列を担うことの無い様にする。ただし、確実に予測できる位置に音韻上の曖昧母音が挿入された場合を除く。(Butmet >Butumetu, fæþm>fæðm)

・特に必要が無い限り、対象となる言語の音韻とその表記との最古のものと、そこから現代のものまでへの変遷とを基にする。
借用語独特の音節の発生による固有語の綴りへの影響が最小限になる様に努め、その読みを表現する為に専用の表記法を採用した言語ではその表記方法も尊重する。

・対象となる言語の音韻史に現れる音韻的対立の全て(日本語では下記のもの)を書き分けられる様にする。ただし、その言語の音韻史の範囲を超えない様に、存在したことが明らかでない音節や、音韻以外を基にした区別は扱わない。(綴りの維持によるものを除く)
「同音異義語を書き分ける」という性質上、読みからは綴りを特定できない場合が多いが、綴りからは読みを特定できる。

・現代語音(アクセントを含む)
・歴史的仮名遣(全ての綴りを規則的に読めるように、例外的表記を改変)
・字音仮名遣(ア段以外の合拗音を含む)
・韻尾(t:p, n:m, u/i:g)
・上代特殊仮名遣(ア行のエとヤ行のエの対立を含む)

・ある時期に於いて区別をされていた音素を仮にA、Bとする。その時期より後にAとBとの区別が失われた場合、「AとBとの合流後の音素」をAまたはBと区別するための綴りは作らない。
(音韻上そのような区別がされることは無い)

・複数の文字の音価をそれぞれの元の音価に分離する必要がある場合にはトレマなどの分音記号を使うが、分音記号付きの文字はそれ単独では分音記号を外したものと読み分けることができないものとする。(記号が無いと複数の文字の音価が一つの音素を成してしまう場合や、他の文字の音価を変化させるだけで自身の音価は常に変わらない文字である場合など)


【綴りの維持】
・語形変化に於いて、変化前に使われていた文字を出来る限り変化後にも残すことを「綴りの維持」と呼ぶ。

・共通語や方言のそれぞれに於いて読みの変化が綴りに対して規則的に起きている限り、綴りを元のままに維持する(該当する語の極端に少ない規則性を見出すのは避ける)。規則的か否かの判断に使われる情報は元の綴りと読みの変遷のみとし、「形態素頭/字音/活用語である」などの情報が無ければ正しく読めない様な綴りにすることは無い。(綴る時にはその様な情報が必要となることがある)

・複数の綴りの音価が合流した場合、それらの綴りの音価は同様に変化していく。

・綴りが担う音価が複数に分岐することでその綴りを維持しきれなくなった場合(最小対が発生した場合)は、その音価の変化の仕方に従いつつ最小限の綴り変化で対応し、元の綴りを出来るだけ維持する様に努める。
ただし、次の点に注意する。

・綴り変化の対象となるのは例外的な読みとなった方であり、それに対立する規則的な読みの綴りを変えてはならない
・例外的な読みに対応する綴りが必要になった場合、元の綴りにその派生関係にあることを示す記号(以下「派生記号」)を付けた綴り、またはその代用表記を使う(以下まとめて「派生表記」)
・既存の綴りで対応できる限り、新たな派生表記を採用してはならない
・新たな派生表記を必要とする音価を複数の文字が共同で成した場合、それらの文字全てに派生記号を付加する。ただし、その代用表記に於いて元の綴りから変化した様に見える文字が一つだけとなることはある。(uv>w, ij>y, tĕju)
・綴り変化と同時に文字の音価を増やしてはならない
・使用される綴りや音価に関する時系列を無視してはならない
・意味の差が生じない範囲では綴りに対応する読みが二通り以上になることはあるが、何らかの二通り以上の読みを統合する為の派生表記を採用することは無い。
・超分節音素を表す記号と分音記号は、その役割の限りに於いてどの文字とも組み合わせられる(ここで言う「派生記号」には含めない)。

・いかなる理由での語形変化なのかが曖昧な場合、候補となる語形変化の内、最も蓋然性の高いものを優先する(文字上の音節構造が等しいものや、他の語形変化との対称性があるものなど)。更にそれも判断し難い場合、先ず最も同音異義語の書き分けに役立つものを、その次に最も無標なものを優先する。ただし、接辞を付ける際にはその接辞の形を変化させないことを優先する。

・各活用形も元の語形からの「綴りの維持」に従うので、音韻上は同じ活用の種類に属していても、綴りは異なる場合がある。
ただし、「綴りの維持」に反しない限り、語幹を統一して活用させる。


【直感的表記】
・規則的に読める様にするだけではなく、不都合が無い限り規則を単純化する様に努める。

・派生記号が積み重なっていくのを防ぐ為、派生表記は元の綴りとは常に異なる音価を担う。読みの分岐が解消された場合、元の綴りに戻す。(下記の規則に関して派生記号を省略された文字と省略されていない文字の音価が等しい場合はある。他の文字での代用表記や省略は派生記号を見えなくするだけであり、派生記号は潜在的に存在している)
※同じ綴りからの別々の派生表記同士は、両者がそれらの元の綴りと異なる音価であるならば、同じ音価になっても良いのかも知れないが、具体例が思い浮かばず、想像が届かない。仮にどちらかの派生表記のみを生かす場合、どちらを優先すべきかの基準が問題となると思われる。

・新たな派生表記が必要になった場合、元の綴りが規則的にその音価を持つ位置でもその派生表記を使う。その派生表記が他の文字での代用表記ではなく派生記号の付加によるままであれば、曖昧さが発生しない範囲でその派生記号を省略する。
※分音記号が必要無い環境に於ける分音記号の不在は省略(本来あるべきものの不在)ではなく真の不在である。
※この省略は超分節音素の記号にも適用される。

・新たな派生表記が必要になり、更に次のどちらかに該当する場合、分岐した読みのどちらか一方のみを例外的とみなしたり、既存の他の綴りに変化させたりすることは無い。この対応を仮に「相互標識」と呼び、文字の扱い易さに関して都合の良い片方にのみ派生表記を与える(実際には対等な関係)。特にその様な都合が無ければ、他の変化との対称性が保たれる様にする。(日: f/x/p/b, 英: c/kなど)
※転呼ハ行fと不転呼ハ行xの対立については前項の規則によっても説明し得るが、それのみでは語頭の例外的な転呼を「既存の他の綴り」であるワ行として綴ることが否定されない。

・相補分布していた2種の読みを担っていた綴りに於いて、各読みが現れるべき条件下で例外的にもう一方と同じ読みが発生した場合(双方向の例外)
・何らかの法則を以って読みを予測することが困難であり、使用頻度に偏りが見られない場合(双方向の例外の増え過ぎた状態とみなす)

・維持されるべき綴りが不明または存在しない場合は、Segsyoxafuによって定められる綴りとして最も無標な(特徴が無い/頻出する)形に倣う。
その上で、ある音価を示す綴りが複数想定される場合、その内の最も文字数の少ないものを採用する。

・「前後の文字との関係に於ける無標な綴り」を「単独での無標な綴り」より優先する。

・無標な綴りの例:

・派生表記の元の綴りである
・借用語だけでなく固有語にも現れる(「固有語にしか現れない」とは異なる)
・活用の種類の特徴と合う(例: tukafayru)
・文字数が少ない(代用表記は元の文字数に直して数える。例: syuuよりsiu)
・音韻的な機能をより長く持っていた(例: 「感応」などの連声から、mよりn)
・音声学上の統一感が強い(例: 破裂音にも成り得るダ行に属するdu/diより、成り得ないザ行に属するzu/zi)
・音素の一次分裂に於いて元々その音価を持っていた(音韻上区別された音価を持つ二種の文字が、その区別を維持したまま、一方Aの一部の音価がもう一方Bの音価と同じになった場合、その音価に於いて無標な文字はBである)
・綴り上の音節一つが丸ごと黙字となっているものでない(英: -ian>-e)
※単一の子音字と同じ音価になった重子音字であっても、その2文字のどちらかをここで言う黙字とすることは無い。

・音声転写に於いて、失われた音韻的対立を利用した方がその音声を上手く転写できる様に感じられる場合には、その対立に於いて有標な綴りを使っても良い。ただし、これは音価の復元とは異なり、その対立は失われたままである。
音声転写だったものが音声そのもの以外の意味を持った場合や、複合語の一部になった場合、その時点から綴りの維持が始まる。
ちなみに、複数の音価を経験した仮名が、全ての語に於いてその音価全てを担った訳ではない。
例: 可能動詞はハ行転呼の発生後のものであるため、「買える(買へる)」などは不転呼のハ行を経験していない。また、「しちまう(しちまふ)」という語の「ち」は上代に於ける「ち」の音価を経験していない。

・超分節音素の記号は、これを記号とは呼びながらも、その在り方/扱われ方は文字と同格のものとする。その為、超分節音素の記号にも文字と同様に綴りの維持を適用するが、その音価の対立の復元が現代語のイントネーションなどに影響してしまう場合は、その綴りの目的に応じて柔軟に対応する。また、超分節音素の記号に派生記号の付いたもの(またはその代用表記)も存在し得る。


【他】
・読みと綴りの関係が乱れない限り、一般的に浸透した仮名遣を尊重する(「優先」とは異なる)。

・漢字の置き換えや当て字/異分析のある語も語源に従って綴るのを優先するが、必要があれば書かれた字に従って綴っても良い。

・字音か和語かが綴りに影響を与える場合は、確かな根拠が無い限り、どちらとして扱っても良い。

・慣用音は、その字音の発生原因となった字音を推定し、その綴りに合わせる。

・古文を扱う場合は、現代語の読みで書くか、当時の読みに合わせて書くかを選んでからにする。

・文字の音価が現代共通語と異なるということを示す必要がある場合には、国際音声記号を使う。これは音韻史を利用した綴りとも、Segsyoxafuに於ける音声転写とも異なる。


関連文献:
城生伯太郎 福盛貴弘 斎藤純男(2011) 「音素 phoneme」『Dictionary of Basic Phonetic Terms 音声学基本事典』187–193


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