アクセント

アクセント核の母音字には鋭アクセント記号を付ける(単独で拍となっている子音字がアクセント核なら、その子音字に付ける)。
※アクセント核とは、語句の区別に関わる音の高さの変動を起こす要素、またはそれを持つ拍のことです。東京式や京阪式のアクセント体系に於いては、アクセント核から直後の拍に移行する時に音が急激に下がります。
ú/ó/á/é/í
áw/áy/úy

名[な]: Na
木[き]: Kúy
水[みづ・ミズ]: Midu
秋[あき]: Áki
花[はな]: Xaná
会社[くゎいしゃ・カイシャ]: Kwaisya
電気[でんき]: Dénki
お菓子[おくゎし・オカシ]: Okwási
男[をとこ・オトコ]: Votokáw
大学[だいがく]: Daigaku
文学[ぶんがく]: Búngaku
雪国[ゆきぐに]: Jukíguni
歳時記[さいじき]: Saizíki
弟[おとうと・オトート]: Otoftó
中国語[ちゅうごくご・チューゴクゴ]: Tyuggokugo
普及率[ふきふりつ・フキューリツ]: Xukífuritu
山登り[やまのぼり]: Jamanóbori
見物人[けんぶつにん]: Kenbutunin
けんもほろろ: kénmoxororo
お巡りさむ[おまはりさむ・オマワリサン]: Omáfarisam
金婚式[きむこんしき・キンコンシキ]: Kimkónsiki
国語辞典[こくごじてん]: Kokugo-zíten
十一月[じふいちぐゎつ・ジューイチガツ]: Zifuhitigwatú
座りな>座んな: suvanna
座るな>座んな: suvánna


以下の幾つかの例では読み仮名を省略した。

体言(体言性が弱まった場合を含む)や形容名詞以外の語は、その直後に接語が無い限り、語末拍(促音ならその直前拍)にはアクセント核が無いとみなす。
接語があれば、アクセントに応じて記号を付ける。
ただし、語末拍が次のどれかである場合、その直前の拍にアクセント核が移動し易い。
・撥音
・引き音
・二重母音の後部拍
参考: 分かち書きと大文字

する: suru
する時[するとき]: suru tóki
するまで: suru máde
するとは: surú to fa
するしか: surú sika
するから: surúkara
するけど: surúkedo
「する」と言った: «surú» to itta
して: site
しては: sité fa
これに: Kore ni
これには: Kore ní fa
あの: ano
あの声: ano kóve
「あの」と言った: «anó» to itta
今日は[こむにちは・コンニチワ]: komnitifa
「今日は」と言った: «komnitifá» to itta
あっ: at
「あっ」と言った: «át» to itta
しない: sinai
「しない」と言った: «sinaí/sinái» to itta
cf.
月[つき]: Tukúy
好き[すき]: sukí
駄目[だめ]: damáy
12月1日[じふにぐゎつついたち・ジューニガツツイタチ]: Zifunigwatú Tuuytatí/Zifunigwatu-tuuytatí
102年[ひゃくにねん]: Xyakú Nínen/Xyakunínen


前にある語のアクセントの影響を受けて付属語などのアクセント核が弱化することがある。
弱化したアクセントの記号は省略可。

ここまで: Koko máde
どこまで: Dóko made


「日Xi/上Ufay/内Uti/下Sita/人Xito/(所Tokoro)」が制限修飾されると語末の拍が核になる。

日[ひ]: Xi/xí
明くる日は: akuru xí fa
24時間である日は: Nízifu Jozíkan de áru Xi fa
人[ひと]: Xito/xitó
大きい人は: ofokíi xitó fa
哺乳類である人は: Xonyúurui de aru Xito fa


「時/限り/(事)」が制限修飾されると頭高型になる。

時[とき]: Tokí/tóki
時の: Toki-no/tóki no
この時: kono tóki
時は来た: Tokí fa kíta
する時は: suru tóki fa
限り[かぎり]: Kagirí
限りの: Kagiri-no
この限り: kono kágiri
する限りは: suru kágiri fa
事[こと]: Kotó/kóto
事の: Kotó no/Koto-no/kóto no
する事は: suru kotó/kóto fa


ただし、アクセントによって意味が変わる場合、制限修飾されていてもアクセントが変わらないことがある。

その「下」とこの「下」とでは意味が異なる。:
Sono ​​«sita» to kono «sita» tó de fa Ími ga koton’áru.
過去・現在・未来といふ三つの時:
Kwáko/Génzai/Mírai to ifu Mittú no tokí
彼の時は止まったままだ。:
Káre no tokí​ fa tomatta mamá da.
cf.
彼が三つの時:
Káre ga mittú no tóki
相手が彼の時は大人しい。
Afité ga Káre no tóki fa otonasíi.


上記以外では、アクセントの変化を伴って連続した形態素群を一語として扱う。
他の形態素と置き換えた場合からの類推も基準とする。
(他にも必要な条件があるかも知れない)

ある程度: áru tegdo >arutégdo
いつの間に: Ítu no ma ni >itunomani
いつの間にか: Ítu no ma ní ka >itunomaní ka >itunomanika
この間: kono afida >Konohafidá
これじゃない(これじゃん): Kore dyánai
cf.
これじゃない(これに非ず): Kore dya nái


平板式の動詞が他の動詞連用形の直後に来ると起伏式に変わる。

始める: xazimayru
し始める: si-xazimáyru
終はる[をはる・オワル]: vofaru
し終はる: si-vofáru
忘れる: vasureru
し忘れる: si-vasuréru
負ける: makayru
し負ける: si-makáyru
比べる: kurabayru
し比べる: si-kurabáyru


平板式アクセントの連体詞が「人/子」などを修飾するとアクセントが変化することがある。

あの人: ano+xitó >Anóxito
この人: kono+xitó >Konóxito
その人: sono+xitó >Sonóxito
あの子: ano+kaw >Anókaw
この子: kono+kaw >Konókaw
その子: sono+kaw >Sonókaw
この度: kono+tabi >Konótabi
その他: sono+xoka >Sonóxoka
その節: sono+setu >sono sétu >Sonósetu
cf.
どの人: dóno xitó
どの子: dóno kaw


助詞「の」が後続すると平板式になる語がある。
その場合は助詞とその直前の体言とを繋げるが、体言としての機能は失われないので、ハイフンを挟むことを推奨する。
ただし引用文や作品名の末などでは平板化しないこともある。

花の: Xaná+no >Xana-no
男の: Votokáw+no >Votokaw-no
弟の: Otoftó+no >Otofto-no
昨日の: Kinófu+no >Kinofu-no
『荒城の月』の: “Kwagzyag no tukuy”-no/“Kwagzyag no tukúy” no
cf.
一の: Ití no
六の: Rokú no
次の: Tugí no
男の子: Votokáwnokaw


助詞「と」が助動詞「う/よう/まい」に後続すると、動詞が平板化することがある。その場合は助詞とその直前の動詞とを繋げる。

泣かうと[なかうと・ナコート]: nakáu+to >nakauto
着ようと: kijóu+to >kijouto
泣くまいと: nakumái+to >nakumaito


現代京阪アクセントでは高起式(平進式)を無標、低起式(上昇式)を有標とみなし、後者に属する語の語頭に低起式符として単引用符開「‘」(上昇する形から)を付けてみる。
アクセント核と異なり、特定の拍のみに係る要素ではない為、文字上の記号を使わずに表した。
また、複合語に於ける「式保存の法則」から、この記号は語末ではなく語頭に置くのが良いと判断した。
※順接の助詞も高起式の一種とみなす。

蚊: Ka
名: Ná
絵: ‘Ve
飴: Amay
紙: Kámi
肩: ‘Kata
雨: ‘Amáy
頭: Átama
椿: ‘Tubáki
狐: ‘Kitune
形: Katati
着る: kiru
書く: ‘kaku
進む: susumu
生きる: ‘ikiru
無い: ‘nai
赤い: ákai

数字や借用語の元の綴りが語頭にある場合は、低起式符を使わない。
この記号と鋭アクセント記号の両方を適切に扱えない状況に於いては、どちらの記号をも省略する。

参考文献:
佐藤栄作(2005)「HLL型からアクセント史を考える」


他の方言のアクセントについては保留。

このように、アクセント記号には「綴りの維持」の要素を込めていない。
現代共通語のアクセントへの古典アクセントの利用は同綴異義語を減らすのにはあまり役立たないと考えた。実用性より歴史的変遷を徹底的に重視するローマ字規則を作るのであれば、ここに改善の余地があると思われるが、古典アクセントの音価を復元すると現代語の句音調やイントネーションとの両立が出来なくなるとも思われる為、その様な問題の生じない分節音とは扱いを変える必要があるかも知れない。


私見:
一般的には高起式もアクセント核を持つとされているが、東京式アクセントに於けるアクセント核とは異なり、あまりわざとらしく音を高くしてしまうと低起式との区別が難しくなる様に思う。そこで、京阪式アクセントを「核」という概念を使わないで記述してみた。

青線: 低拍(語頭のL字線と非語頭の傍線は同じもの)
赤線: 青線が無ければ語末を下降調に、あればその直前拍のみを高くする
青丸: 青線の後退で生まれた核
現代京都(京阪式アクセント)で一音節語を除いて高起式の語の語末に核が来ることが一切無いのは、この解釈に於ける低拍が語の外には出られないからだと考えられる。
この解釈で記述できないアクセント型はおそらくその全てが複合語なので、その様な型では形態素ごとにこの解釈を適用する。

平安時代末期→鎌倉時代:
・拍内上昇の赤線と青線が共に消えた
・語頭の拍内下降の青線が直後の拍に後退した
・終止形が連体形に合流した
・活用語の語末の拍内下降が消えた
・[〇〇]]の青線が消えた
・[〇〇〇]]の青線が半拍だけ前進した

鎌倉時代→江戸時代初期:
・〇〇[〇]]の拍内下降が消えた
・青線を二つ持つ語に於いて、語末に近い方の青線だけが残った

江戸時代初期→現代京都:
・[〇〇]〇(名詞/形容詞)や一部の[〇]〇〇(動詞)の青線が直前の拍に前進した
・語頭に青線がある語での音の上がり目が後退した(青線に変化は無い)

江戸時代初期→現代東京:
・赤線の後の下降が消えた
・形容詞の語末の青線が消えた
・三音節語の語頭の青線が名詞では消え、動詞では直後の拍に後退した
・青線が直後の拍に後退したが、語の外にはみ出した青線の性質を維持する為に、青線の元の位置で他の拍より高い拍としてアクセント核になった。

京阪式アクセンの例(上の画像に於ける赤線を仮に「重」とする):
シゴト: 高高高→〇〇〇
チカラ: 高低低→〇低〇
ハタケ: 低高低→重〇低
チカラシゴト: 高高高高低低→〇〇〇〇低〇
ハタケシゴト: 低低低高低低→重〇〇〇低〇

現代京都に於いて「重」のある語は一音節語で高起式、それ以外で低起式になる。

参考文献:
沖森卓也[編著](2010) 「音韻史」『日本語ライブラリー 日本語史概説』 146-147 朝倉書店
※上の画像はこの本に載っている表のコピーにこちらで色を付けたもの


上記の私見に基づいた平安時代末期のアクセントのローマ字表記案:
青線: ù/ò/à/è/ì
赤線: ȕ/ȍ/ȁ/ȅ/ȉ
青線か赤線(※)の位置での音節内上昇: ǔ/ǒ/ǎ/ě/ǐ
青線の位置での音節内下降: û/ô/â/ê/î
※一音節名詞を除く。

戸: Taw
巣: Sǔ
名: Nâ
歯: Xȁ
手: Tè

庭: Nifa
百合: Jǔri
溝: Mizô
石: Isì
雪: Jǔkì
虹: Nîzi
山: Jàmà
松: Màtu
猿: Sȁru

娘: Musumè
頭: Àtamà
二十歳: Xatàti
磁石: Zǐsyàku
日向: Xîmuka
命: Ìnòti
あわれ: Ȁfare
兜: Kȁbutò
兎: Ùsagi
形: Katati
紫苑: Sǐvoni


没案:


正書法(凡例)

原則
直音
拗音
長音
促音
撥音
上代特殊仮名遣
特殊な記号
アポストロフィ
外来音と外来語
分かち書きと大文字
Inglisc